マニアの世界(アクロス編集部編)

マニアという人種をクルマ、カメラなどの業界ライターが考察。初版が95年であり内容は古いがなかなか示唆に富む。プラモデルマニアの項では特にその鋭い分析に感心。
玩具メーカー主導のスケールモデル全盛時代から小ロットのガレージキット時代への変遷とともにモデラーのマニア化が進む。ガレージキット政策は少額投資で始められるので、特殊なカテゴリに特化したスペシャルモデルを製作するアマチュア原型師が登場する。ガレージキット流通のコミュニティが形成され、製品販売の場としてのイベントが開催される。消費者は自分の願望が実体化されたモデルを得、製作者はコミュニティ内の同好の士からの注目と賞賛によって欲望が満たされる。
これは、現在のインディーズミュージックやコミックなどと共通の事象ではないか。製作機材の低価格化、YouTubeなどの発表の場の大衆化とともに自称アーティストが大量発生し、非メジャー志向、非営利主義の内輪受け作品を作り散らす。その中から突然変異的にスマッシュヒットが生まれることもあるが、大半は仲間以外にはその良さが理解できない類の代物だろう。
人の事は言えない。YouTubeに公開しているAkabekoFilmビデオも同じ。正札付けて売れるものではない。ではそういった創作物の存在意義は?商業作品が対価として求めるものが金である一方、YouTubeに投稿されたビデオでは再生回数でありコメントであり「Like」の数。売る必要のない創作物って、かなり気楽で自由で、相対的に芸術的価値は低い。しかしその創作物で食っていく必要のない素人が作ったものが、限定的コミュニティ内での一定の需要を満たしている。真面目な芸術家にとっては受難の時代なのかも。