スイート・リトル・ベイビー(牧野修)

少し前に読んだ「傀儡后」「呪禁捜査官―訓練生ギア」がラノベ風味毒電波系だったので、これが同じ傾向だったらもうこの作家の本は暫く手に取ることがないだろうと読み始めたが、予想外だった。勿論いい意味で。
幼児虐待を絡めたサイコホラーと思わせておいて、エピローグで思わぬ終幕。10ページもないラストシーンが、主人公の未来を予感させる。自由な、あるいは最悪な未来。
文庫あとがきで筆者は、この小説のモチーフである幼児虐待について解説している。大多数の人は小説に書かれていることは虚構であり、それを理解した上で楽しんでいるはずだが、中には書かれていることを間に受けてしまう人もいることへの危惧であろう。確かに、本書で繰り返される「耳の聞こえない母鳥」という概念は、子の親、特に母親への偏見と無理解を生み出しかねない。形質的先天的な虐待者、さらには先天的な犯罪者といった考え方は万人に受け入れやすく、何かを解決したような気にさせる。飛躍しすぎかもしれないが、差別やジェノサイドのロジックとも繋がりそうな気がして気持ちが悪い…なんてことを考えさせられた。