空気人形(是枝裕和、2009)

ペ・ドゥナは韓国の女優なのに作り物めいた美人じゃないのが好感もてる。
ダッチワイフが自我を持って世間に出ていく設定なのだが、この手の映画だと世間は異形の存在を受け入れず、辛い目に遭うのが定石。いつそんなことになるのかハラハラしながら見続けるのは苦痛。しかし、想像したような展開にはならず、淡々と時間が進む。
ラストシーン、自らゴミ捨て場に横たわり見る幻覚には不覚にも涙しそうになったが、すぐ違和感を覚え我に返った。関わった人々皆が空気人形の誕生日を祝ってくれる幻覚だが、その人々はお互いに深い関わりを持っていない。中心に空気人形が居るだけ。他人との深い交流を避けている人間が、幻覚の中でだけ空間を共有している。この、空気人形が見ている幻覚が、それまで描かれていた日常の中での普通の人々の虚ろな生き方との対比となって、違和感を際立たせている。
ロケは大川端、中央区湊あたり。都心に近いのに取り残されたような土地だが、結構いい雰囲気。