愚者と愚者(上) 野蛮な飢えた神々の叛乱(打海文三)

孤児部隊三部作の第二部上巻。
第一部に続き日本は内戦状態。その中で、主人公カイトと共に戦ってきた俊哉が性的マイノリティ差別のゲイ集団「黒い旅団」の主義に侵され叛乱を企てる。叛乱を決意するまではカイトの指揮下で特殊工作に専念していて、そのせいもあって精神をすこし病んでいたということなのだろう。カイトに追い詰められて自死するのがラストシーンだが、やりきれない結末でもある。
主人公たちが子供のうちに徴発され20歳そこそこで中隊長、大隊長になってしまう異常な世界が描かれていて、その子供が様々な人間へと変貌していまう様が痛々しい。まともな教育を受けられず、難問を解決する術を日々の戦闘行為から学ばなければならない主人公達は、学費とは比べ物にならないものを代償として支払っている。
それでもカイトや椿子が生き延びているのは、異常な世界を抱え込むのではなく、その世界に適応しているから。そこには、心を病んでしまう人間がまともなのか、適応し自分を変えていける人間がまともなのかといった議論の付け入る余地はない。