兇眼(打海文三)

複数のプロットが並行で語られるが、どれも中途半端というか食い足りない。
主人公、雑誌記者の女、逃亡集団の女、探偵社の女調査員、それぞれの視点で物語が進行し、傍流にカルト教団の始まりから終焉、主人公の過去などが絡むが、尻すぼみなのが雑誌記者の女の行動と主人公の過去。前半、女は謎解きを推し進め恐怖を体現する役回りだったがいつのまにか存在が希薄になり、最後はどうなったんだっけ?主人公の過去もその虚無的性格の理由付けと女との接点以上の意味を感じない。やはり最後は打っちゃられて消えてしまった。
入れ替わるように中盤以降の逃亡集団の少女が前面に出てくるパートは結構引き込まれた。逃亡を続けることの絶望感と緊張感、その中での僅かな希望は鮮やか。もしかして、この少女を引き立てるために中年の世捨て人ぶった主人公や自分勝手でエロい雑誌記者の女を延々と登場させ続けてた?
余談。探偵社のウネ子はなぜか孤児部隊三部作の椿子・桜子姉妹を連想させる。決断力、行動力、残酷さなど。この探偵社=アーバンリサーチが登場する本が何冊かある。今から読むのが楽しみ。