渇き。(中島哲也、2014)

原作「果しなき渇き」は数年前に読んでいた。救いの無い話、倫理観ゼロ、残虐な描写多数。加えて大都市近郊の空虚な雰囲気、ロードサイド感が強く印象に残っている。まさか映画化されるとは思わなかった。どちらかといえば「ヒステリック・サバイバー」のほうが映画化に向いてるんじゃないかとも。

映画化でストーリーは整理され、それでも原作の雰囲気をよく表現しているなと感じる。低所得者層の閉塞感、半グレの気味の悪さ、若年層の捉えどころの無さ、平穏な日常の裏に存在する薄ら寒い現実を突き付けられる。藤島の荒れっぷりが最初から最後まで同じ高レベルを維持していて、負け犬が徐々に狂犬に変貌する原作とは違う印象であったが。また、ノワールとしての原作を土台としながらも、笑えるシーンも結構多い。

尺の関係もあってか、石丸組との絡みは端折られている。趙も原作とは違う形で殺害。
一方、原作ではエピローグに近い印象であったラストシーン、東先生との絡みが比較的長い時間描かれている。加奈子の異常性描写の最後のダメ押しとともに、藤島の暴走がどこまで続くのか漠とした落ち着かなさを余韻に、物語は終わる。


キャストの印象。

役所広司藤島昭和)
前述のとおり冒頭から終幕まで粗暴、凶暴。狂気がちょっと足りないかな。

小松菜奈(加奈子)
驚いた。役にハマってる。無邪気な笑顔、表情を閉ざした演技、メリハリ効いてる。

中谷美紀(東先生)
物語最大(唯一?)のミステリ要素を手堅く演じている。さすが。

高杉真宙(松永)
原作の棟方。拷問シーンだけ強い印象。

二階堂ふみ(遠藤)
ハマってる。いるよなこういうクソJK。

清水尋也(「ボク」)
原作の瀬岡。まずまず。

橋本愛(森下)
原作の松下。手堅い。イマドキの若者の感じが上手い。

黒沢あすか(桐子)
垣間見えるビッチ感。貫録あり。

青木崇高(咲山)
原作とは設定が違うので仕方ないが、出番少ないし印象が薄い。

國村隼(辻村医師)
ベテランの味。

オダギリジョー(愛川)
原作の小山内刑事。ちょっとカッコよすぎでないか?

妻夫木聡(浅井)
怪演。原作とは全く異なる人物造形(一番の下衆野郎)だが結構好き。笑える。


それにしても中島哲也監督らしい画作りが全編に溢れている。クロスカッティング多用、ミスマッチのようで効果的なBGM、挿入されるアニメーション。カーアクションも新しい。クルマで追いつ追われつみたいなのはあまり無く、横っ腹に突然突っ込まれるところを車内から撮っているシーンがかっこいい。それに、最後のシーンのフェードアウトからエンドロールに切り替わる時に流れるあの曲!鳥肌立った。「ダイ・ハード」のラストシーンで流れる“Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!”みたい!

渇き。STORY BOOK

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