粘膜蜥蜴(飴村行)

前作「粘膜人間」がかなり苦痛な読書体験だったのに、結局読んでしまった。怖いもの見たさって奴か。
物語世界は前作を継承し戦中日本。金持ちの家の鼻持ちならない軍国主義少年が主人公。蜥蜴人間が下男だったり、いかれたキャラが多数登場。しかし、前作と違って救いの無い絶望感のようなものは感じられず、むしろ笑いを誘うシーン満載。出色は爬虫人(蜥蜴人間)富蔵。人間じゃ無いくせに軍人になるのが夢で、「尊皇攘夷」だの「七生報国」だの喚いてる。この富蔵がラストシーンで驚きの告白するんですが。
前作同様、身体破壊シーン満載。読み進むとどんどん非道い事になりそうな予感が高まり、怖れていた通りに凄惨な場面が始まる。これ、嫌な夢を見ていて夢である事を自覚しているのにどうにもならなくて早く覚めないかな、と思っている時の感覚に似ている。
兎に角、前作より読後感が良かったのでもう一冊読んでみようと思う。題名は「粘膜兄弟」(笑)。