野獣死すべし(村川透、1980)

残念ながら原作とは別物だが、独立した映画としてはかなり好き。高校生の頃は仲間内で大藪春彦を回し読みしたが、同じ時期に松田優作主演のこの映画が公開された。昔の事なので劇場で見たのかTV放映だったのか定かではないが、原作と映画の違いについて多少の議論はあったものの結局は仲間達には熱狂的に支持された。
原作における伊達邦彦が手段を選ばず成り上がっていくタフガイなのに対し、映画では戦闘ストレス反応でおかしくなった戦場カメラマンがキレて暴走するような人物造形だが、世間を知らず世を拗ねた高校生からすればどちらも魅力的だった。特にラスト近く、逃亡中の列車内で室田日出男演じる刑事を相手にロシアンルーレットしながらリップ・ヴァン・ウィンクルアメリカ版浦島太郎)の話をするシーンは衝撃的で、棒読みのように「わかります?面白いでしょ?」と話す松田優作の物真似がアホな高校生の間で流行った。
それから、松田優作の手下になる鹿賀丈史のチンピラ具合は素晴らしかった。松田優作岩城滉一が同窓会をしているレストランのボーイ役で登場し、鼻持ちならない有名大学出の連中に噛みつくシーンには大笑い。劇団四季でミュージカルやってた人とは思えない。
刑事役の室田日出男もよかった。いやらしい刑事役がハマっていて、「ふぞろいの林檎たち」で中井貴一をいじめてたのを思い出した。某カルトが映画化されたらこの人が教祖役にぴったりだと思ったが、残念ながらもう亡くなっていた。