ブラッド・ミュージック(グレッグ・ベア)

初めて読んだとき既にアメリカではセミクラシック評価されていたらしい。アイデア、ストーリー、スタイル、全てにおいて骨太かつ精緻。個人的オールタイムベストを選ぶならトップ5に必ず入れるでしょう。
主人公ヴァージルはマッドサイエンティストというよりオタク。幼稚、卑屈、自信過剰。こんな人間が人類滅亡の引き金を引くというのは笑える。好きなパートはヌーサイトが北米全体に勢力拡大して、ヨーロッパのTVクルーが航空機から中継する場面。航空機が不調を来たし、アナウンサーが状況を伝えるなか墜落するまでの様子って、もしかしてゴジラのパクリ?まさかね。同じ時点、感染しなかったちょっと頭の弱い少女が人間がいなくなったニューヨークを彷徨う場面もいい。ヌーサイトに感染し航空機高度からもわかる地表の異常、人っ子一人いない都会。なぜか惹かれる。砂漠とか山の上とかも好きだし、人の営みから離れた荒野や地の果てを志向する精神構造にはそれなりの理由があるのでしょうか。自分の子供時代を一度検証してみる必要があるかもしれない。封印してたトラウマがあったりして。