ガーディアン(石持浅海)

主人公が超常現象により身を守られていて、その現象により様々な事件が起きる。現象自体がテーマではなく、事件の謎解きや進行の条件として設定されている印象。読み進めるうちに筒井康隆家族八景」以降の七瀬シリーズを思い出し、その違いを意識してしまった。
自ら名付けた「ガーディアン」という現象で主人公は肉体を守られる。早くに死んだ父の遺志と考えている主人公は、そのことを会社の同僚にも話す。ストーリー成立のためには必然だが、違和感がある。
一方、「家族八景」の七瀬は精神感応能力を持つことを隠す。人の考えが読めることがばれたら相手にしてもらえないし恐れられる。社会生活の継続に困難を来すだろう。人心を読んでしまったこと、しかしそれを誰にも話せないことで苦痛や葛藤や恐怖を味わわなければならない人の悲劇がテーマ。
本書で設定された現象は、それを目の当たりにした周辺の人々が示す反応や行動に焦点を当てていることが決定的に違う。主人公がその存在を当たり前と思っているこの現象が消えた後に起きること。あるいはこの現象が暴走しあるいは誤作動したら。そんな切り口でストーリー展開したら全く違う物語になっただろう。そんな話のほうが好みなので、本書はちょっと物足りなかった。