ハルビンカフェ(打海文三)

登場人物が多い!しかも偽名を使ってる設定だったりして語られる視点が変わるたび「こいつ誰だっけ?」となる。
主な登場人物はノンキャリア警官の小久保、キャリア警察官僚の水門、洪こと石原こと布施(以下布施)。全編暴力、謀略、裏切りの応酬。読み進むうちに麻痺してきて淡々とした進行に思えてくる。それでも終盤の市街戦に向けた緊張の高まりを感じる。しかし、そこで物語が決着しない。
といったところで後日談が三章。退職した小久保のところに水門が訪ねてくるくだりは、警官である(あった)二人の物語の決着ということでいいんだろうと思った。しかし実はまだまだ終わらない。石川ルカと一緒に南アフリカに逃亡した布施が殺されるパートが続き、一人残された石川ルカのところに内藤昴が訪ねる場面で終幕。
実は、図書館で借りて初めて読んだ時、展開を追うのに精一杯でしんどかった。時間軸も進んだり戻ったりしてるし。で文庫を買って再読、布施の行動を周囲の人々の語りから追っていくと、色々な事件が時間と場所を隔てて繋がっていてかなり面白かった。
南アフリカで布施に止めを刺した四人が誰なのかという議論をネットで見た気がするが、小久保、水門、昴までは確実だがあと一人…実は、布施は三人に殺されたのではなく一緒に出て行ったのだ、と。そう読むとまた味わい深いラストシーンです。